旅立ち107
それは、じいちゃんが霊力を形にする時に、悪霊と戦う時に作り出していた蝶に酷似している。
若干の違いと言えば、じいちゃんが作り出した蝶は乳白色で、雪の日に浮かぶランタンのように淡い幻想的な光を溢すのだが、それはこの異世界のせいで何らかの違いが出ているのかもしれない。
礼人はひらひらと舞う蝶から目を離すと、どこかにじいちゃんが、自分を助けるために隠れているのではと思い、キョロキョロと辺りを見回す。
「なんで…ここに……」
「そんな…バカな……」
争いの最中でも想い人を探す礼人をよそに、ひらひらと舞う蝶を見るリーフと鉄騎兵を連れている彼女は、礼人とはまた違った表情で、翡翠の蝶を見つめる。
アフレクションネクロマンサーである証拠を見せてみろと、彼女は言った。
独特とはいえ、マネようと思えばマネられる服では無く、特徴的な丸い耳だが、削ぎ落せば丸くなる耳でも無く、もっとアフレクションネクロマンサー様と言われるだけの証拠を見せろと。
それが一体何のなのか、具体的にどういう物を見せれば納得するのかという事は言わなかったが、ひらひらと舞う蝶を見た彼女は明らかに狼狽して、礼人と同じように誰かを探すように辺りを見渡す。
「アフレクションネクロマンサー様の光……」
ひらひらと羽ばたく蝶を見たリーフの声は震え、目には涙が浮かんでいたが、その表情には絶望は無かった。
それは、信じられない物を見たという驚愕の表情ではあったが、探し続けていた物を……決して手にすることが出来ないと諦めていた物を手にした時の、喜びに満ちた表情を浮かべている。




