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旅立ち106
明らかに死に体になっている相手に、躊躇する理由もなく、淡々と詰め寄る鉄騎兵。
強がるリーフを二体で殴り殺し、地面に這いつくばる礼人を四つの足で踏む殺す……それだけで終わる。
終わりから逆転する…そんな希望の光を照らす物をリーフ達は持っていない。
拳を掲げ、終焉告げる暴力を執行するという直前、
「蝶々?」
何の前触れも無く、一匹の蝶がリーフ達の横を通り過ぎる。
ひらひらと羽ばたく蝶。
何の兆候もなく、何の前触れもなく、一匹の蝶が大広間の中を舞う。
それはモンシロチョウでもなければ、アゲハチョウでもない。
翡翠のように鮮やかな、緑色の美しくもぼんやりとした幻想のような光を溢しながら、蝶はひらひらと羽ばたく。
まるで、淡い光が意思を持って蝶の形をなし、淡い光が意思を持って羽ばたくように……
さっきまで全員が争う意思を示していたのに、突如として現れた暗闇に淡く光る蝶に敵味方関係無く目を奪われて、惚けてしまうが、
「じい…ちゃん……?」
礼人は惚けながらも、淡く光る蝶に、じいちゃんの面影を見るのであった。




