旅立ち105
二人で立ち向かえば、どうにかなるという訳では無いが、自分を守ろうと立ち向かうリーフを、一人で戦わせるのは霊能者として耐え難い。
せめて、片方の敵だけでも自分に気を反らす事が出来ればと思うのに、体が全く動かない。
霊力に変換する体力が残っていれば、マナを吸い込むことが出来れば動く事だって出来るのに、
(くそっ…役立たず)
地面に倒れ込みながら、鋼鉄の巨人を睨み付ける事しか出来ない自分に悪態を吐く。
これから起きる事を想像したくはない、殺されるのは間違い無いが、相手の鋼鉄の巨人は武器を持っていない。
だとしたら、どうやって殺す?
鎧で守られている拳で、顔がグチャグチャになるまで殴られ続けるのか?それとも脚を守っている鎧で内臓が破裂するまで蹴られるのか?または体を掴まれてミンチになるまで地面に叩き付けられるのか?
「考えろ礼人!!」
脳に浮かぶ、どうやって殺されるかというイメージ。
それは脳裏の方にまでに及んで、脳の細胞一つ一つが死ぬことを想像してしまうが、
「鋼鉄の巨人は一体は動けない!!後は目の前の二体をどうにかすれば良いだけなんだ!!」
動けないなら頭を回すしかない、唯一動かせる頭を死を想定することに使う訳にはいかない。
「はい!!アフレクションネクロマンサー様!!」
そして、礼人が自分の頭の中に取り付いた死を薙ぎ払う為に叫んだ声が、リーフを鼓舞する叫びとなる。
二人は近付く鉄騎兵に一歩も引かず、徹底して抗戦する意思を見せるが、鉄騎兵は必死の気概を見せる二人に臆する事無く近付く。




