旅立ち97
今回だって本当は、目の前の老いたオークと子供が逃げられないのを確認してから、部屋を後にしようとしたのに「アフレクションネクロマンサー」の名前が出た瞬間に気持ちが揺らいだ。
自分達が生き残る為にやっているとはいえ、後悔の念に押し潰されている。
もし…本当にアフレクションネクロマンサー様がいて、運命変えられるというのなら、
「アフレクションネクロマンサー……だと言うのなら、それを証明してみてくれるかしら?」
「えっ…」
運命が変わる瞬間を、見たかった。
「だってそうでしょ?「ここにアフレクションネクロマンサー様がいます。私達を見逃しなさい」って言われたって、耳を切り落としてアフレクションネクロマンサーのマネをしてたのもいるし」
「うっ…ひっく……」
「確かに、その子の来ている服はアフレクションネクロマンサー様に似ているけど、私の着ている服だって、そっくりでしょ?」
そう言って、自分の服を摘まんで見せた彼女の服は確かに、礼人が着ている軍服に酷似している。
「英雄の名を騙り、英雄の姿をマネるなんて誰にも出来る……だから、証明して欲しいの。その子がアフレクションネクロマンサーだって、私が見ただけで判断出来る何かを」
彼女はまるで、意地悪のように言ってみせているが、本当に英雄だと言うのなら、この位の窮地を脱せないなんて有り得ない。




