夢の中29
それは幽霊や化け物とかではない鎧の兵器。
迫る鋼鉄の巨人、それに対して二月が出した答えは、
「避けるんじゃ!!」
肉の塊でしかない人間に、鋼鉄の巨人の進行を止める術は無く、正面からやり合うのを避ける。
すると全員、二月の命令通りに散らばるように態勢を広げると、
『バキバキバキン!!!!』
森の中を突き破って鋼鉄の巨人が二月達の陣形の中に突っ込んだかと思うと、取り囲まれる形で自ら中央に立ち止まった。
まるでゼンマイが切れたかのように身動き一つしない鋼鉄の巨人。
遠目から見た時は鎧の巨人として見えなかったが、間近で見ると鋼鉄の鎧の下には黒い巨大な体が見える。
巨体を支えるための巨大な蹄に丸太のような足、それに違わないように太い体に怪鳥が羽を広げたかのように広い肩幅、そして丸太のように太い腕……その無骨なまでに大きさにこだわったかのような存在であったのに、
「う…さぎ……?」
礼人は身をすくめ、震える体で眼前にいる鋼鉄の巨人の顔を見た瞬間にうさぎが思い浮かぶ。
鋼鉄の巨人には目も鼻も口も無いが、何も無い訳では無い。
うさぎのように楕円で細長い顔に、職人がこだわって磨きこんだかのような凹凸一つの無い滑らかさ、それに、うさぎのような細長い鉄の耳が添えられている。
圧倒的な巨体にアンバランスな顔……それは全てが相手を威圧する為のものなのだろう。
現にその姿を見て礼人は、
「あ…あっ……」
言葉にならない声を漏らし、
「くっ……」
「うっ……」
大人達は互いに目線を合わせて恐怖に堪える。
恐怖に支配された部隊の士気は地に落ち、すぐにでも尻尾を巻いて逃げて出してしまいそうで、そんなガタガタになってしまった者達を鼓舞しようと二月が声を張り上げようとしたが、
『ぐうぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!』
『ガギャシャン!!』
鋼鉄の巨人が雄叫びをあげる。
鎧が震えて雄叫びをあげる。




