旅立ち82
打ち所が良ければ大きなアザを作る程度で済むが、悪ければ骨が折れる。
医療技術が進んでいて、骨折しても治療が出来るというのなら、何とか我慢する。
けれど、もしも骨折を治せない世界なら致命傷だ。
骨が折れた生き物は本来なら、他の獲物に狙われ、新たな命に繋げる糧になる。
それを自分達の世界では技術の発展により、その運命の輪から逃げているのだが、この世界が運命の輪から逃れられる技術があるかは分からない。
だが、自分が運命によって、この世界に連れて来られた英雄というのなら、
(こんな所で死ぬ訳が無い!!)
なんの根拠の無い話だが信じるしかない。
世界を救い、みんなの未来を守り、希望を手にする物語の英雄達のように、自分もまた、運命を授けられた存在だと、自分は生き延びることが出来ると信じた時、
『ビィィィィィィィ』
背中に何か柔らかい感触が触れたかと思うと、ラップが伸びるような音が聞こえた。
(クッション?)
そんな都合が良い物がなんであるのか?
その理由は分からないが、柔らかい物が背中にあったお陰で……
『ビッ!!』
「あっ……」
背中に触れていた柔らかい物は伸び切ってしまったのか、破ける音が聞こえたのと同時に、
『ザパァァァァ!!!!』
赤い液体が零れる音を出し、赤く染まっていた視界が暗くなり、
『ゴッ!!』
「うぎぇ!!」
背中に柔らかい物を感じて油断した所に、固い物に背中が叩き付けられる。




