旅立ち81
力を高めて片っ端から赤い怨霊溶かすが、それは海の中に落ちた溶岩。
いくら全てを燃やしと溶かして蒸発させる溶岩でも、海という強大な水の前では、その熱量も奪われて冷え固まってただの岩になって落ちて行くだけ。
礼人の強大な力でも、周りの赤い怨念の量が多過ぎて片っ端から溶かしても、片っ端から赤い怨念が補充される。
(意識を…飛ばすな!!……諦めるな!!)
想像したくないが、この赤い怨念が地上まで続いていたら……地面に叩き付けられて地上に赤い花を咲かせる。
途中で抜け出すことが出来れば、意識を無くすのを覚悟で無理にでも滑空する。
(チャンスはある…チャンスは……)
礼人はいずれ訪れるであろう機会を……
(チャンスは……無い!!)
機会を待つ事が出来なかった。
目まぐるしく変わる状況に身を守る事に必死になっていた礼人だが、死ぬかもしれない状況に、自分がさっき言った「死ぬ」という言葉を発したことを思い出すと、それは霊能者としての直感だと認識し、
「上手くいけよ!!」
体を丸めて、背中の羽で自分の体を覆うと卵のようになる。
これは礼人が跳ぶ練習をしていた時、何らかの理由で羽を形成出来なくなった場合に、大怪我はしないで落ちる訓練で身に付けた方法。
空という、人間が生きる事の出来ない場所に無理矢理入り込む以上、不測の事態に陥れば落ちて死ぬのは自明の理。
最悪の死というケースを逃れる為の方法で、多少の怪我は仕方無い。
礼人は出来るだけ、羽の発現の背中から落ちる事を祈りながら頭を手で抱えて落ちて行く。




