夢の中28
アニーが剣を抜いたのを習うように皆も刀を構えるが、
『メキッ!!メキッメキッメキッ!!』
まるでアニーの号令を合図にしたかのように森の中から木々が折れる音が聞こえる。
先程までの静かな空間が嘘のようにけたたましくなる。
何か巨大な生物が、自分の進路を邪魔するものを蹴散らすかのように鳴り響く。
言葉で言われて心構えが出来る相手なら良かったが、このけたたましい音だけでも分かってしまう……
自分達に向かって来ている妖が想像を絶するものなのだと……
そんな妖が複数も……そう考えると否応無しに体が強張ってしまう。
段々と大きくなる音に気を張りながら妖を待つと、
『バキバキバキバキ!!!!!!』
木々の折れる音が盛大に鳴ったのと同時に、森の中から見えた。
「あ…あれは……」
皆が息を呑む。
それは想像をしていたのとは全く違った。
妖怪?化け物?
違う、これは……
「兵器なのか?」
森の中から姿を現したのは鬼でなければドラゴンでもない。
姿を現したのは鋼鉄の鎧。
鎧の兵士……いや、その姿は兵士というにはあまりにもスケールが違う。
『メキメキメキメキ!!!!』
太い木々をへし折るそれは重機のように重く、その鋼鉄の体は重機のように大きく。
「これは凄い……」
森の中に見えるその姿形に、アニーですら苦笑いを浮かべている。
鎧に霊が憑依する例は決して珍しいものでは無い…珍しいものでは無いが……
「一体誰がこんなふざけたものを作ったんじゃ!!」
それは人が身に付ける鎧ではない……もしそれを身に付ける者がいたとしたら、
「サイクロプスに着させたく作ったんですかねぇ?」
平均身長が3メートルは超えるサイクロプスの為に作られた……そう考えればこの大きな鋼鉄の巨人も説明も付くが、
(それとは別に…オークに対抗するために、これを作ったのかもしれませんね……)




