旅立ち63
元々、死んだ者達を内包して徘徊する鉄騎兵がいる場所であるからにして、ここの拠点が穢れた気配を発しているのは当たり前の話なのだが、この先から感じる穢れは尋常ではない。
この先に何かがいるのか?何かが置かれているのか?一切分からないが、天井に吊るされている黒い液体が満たされているランタンを見つめて、
「とても危ないのが…この先に……」
この先を進もうにも「何か」が何なのか分からずに進むのは、目隠しをして車が走る路上を徘徊するようなものだが、
「しかし、時間がありません……」
「ビレー様」
「むぅ……」
今更、迂回をするのも危険なのだ。
これをリーフのわがままと言わない。
マナを扱えるエルフの方が、オーク達より「何か」を感じ取るのは遥かに優れている。
エルフであるリーフが、この先に危険を感じるというのなら、危険なのはほぼ間違い無い。
しかし、部下の言う通り時間が無く、食糧庫はもう少し行けば辿り着けるのに、迂回するとなると一度戻って回って来ないといけない。
「食糧庫は、すぐそこにあるがダメなのかい?」
「…………」
黙ってしまったリーフは、判断しかねている。
目の前の危険を避けて時間を掛ける危険と、目の前から感じる気配に向かって行く危険性、どちらの方がまだマシなのかと思案するが、答えを出せない。




