夢の中26
そして、その思惑は思った通りになった。
自分の霊力は一切に使わず妖を呼び寄せ、
(本当に……よく頑張っていますね……)
礼人は今のをきっかけに、霊力の霧を扱えるようになる……そういう確信を持つことが出来た。
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「全員構え!!」
二月の怒号のような声が響く。
アニーにしてやられた。
いつもの気まぐれと思ったのが良くなかった。
アニーはいつも、なにか我々とは違うものを見ている。
我々が石橋を叩いている所を平然と歩いて通り、
「ほらっ?何ともないでしょ?」
何事も無いかのように振舞ってみせる。
功を焦っているとかでは無いが、どこか行き急いでいるというのか……アニーが決して見せない心の闇。
時に自分勝手な振る舞いをするアニーの心の闇を問うている時間は無く、こうなってしまっては皆でアニーの思惑に乗って進むしかない。
こんな状況では策も何もない、真っ向勝負を挑む。
相手にこちらの位置がばれてしまい、こちらが気付いているのも分かっている。
これがもし、こちらが気付いているのを分かっていなければ囮の部隊を出して、囮に喰いついた所で後ろから挟み込むことも出来たが……
「それはどうですかね?そういうのは弱い相手に有効なので、あまりに実力の差があるのならただ餌になるだけでは?」
「アニー!!貴様は何を考えているんじゃ!?」
心を読まれた二月は、心を読ませないアニーに遂に怒りをあらわにする。
二月の、隊長としての我を忘れた怒号に周りの者達は目丸くして驚くが、
「いつも言ってるじゃないですか?私は私の与えられた使命で動いていると」
「そのために皆を危険に晒すのか!?」
「それは捉え方が悪いですよ。あなたのやり方ではあの妖が民家に行く可能性は捨てきれない。我々は出来うる限りそうならないように努めないといけないのではありませんか?」
「出来うる限りというのは、貴重な霊能者が全員屠られてはならないという、意味も含まれているんじゃ!!」
「ふふっ…それじゃあ全員が屠られないように頑張らないといけませんね」
当の本人であるアニーは二月の叱責に動じることなく、まるで他愛の無い話を楽しんでいるかのようであった。




