旅立ち60
相手が舐めて掛かって来るなら、心の隙を利用させて貰う。
高慢ちきに長く伸びた鼻をへし折るのは、その後でも十分だ。
「それじゃあ、行きましょう」
「リーフ!!」
「急いでみんな」
後ろにいたリーフが、みんなの前に出て先陣を切る。
それこそ、付いて来ない者は置いて行くかのように脇目も振らず、奇麗に並べられた鉄騎兵の横を縫って行くと、そのまま部屋を後にしてしまう。
一人、そそくさと出て行ってしまったリーフを追って、みんなで鉄騎兵が置かれている部屋を後にして廊下に出ると、一足先に出たリーフが周りの確認をしたのか、そのまま先を歩き、
「ここには敵はいないみたいだから、みんなで一緒に食糧庫に行きましょう」
当初の予定と違う事を言い出す。
遅れて部屋から出たビレー達も走って、リーフに追い付くとリーフを守るように囲み、
「姫はアフレクションネクロマンサー様を……」
「さっきの鉄騎兵を見たら怖くなっちゃったから、みんなと一緒にいたいの」
突然の心変わり、そう言われては反論する理由はどこにも無いが、
「それでしたら、食料を奪った後に」
「私、怖いからここに長い時間いたくないの……食料を盗ったらすぐに逃げちゃおう」
それは自分達を気遣って遠慮しているのではないのかと思って、アフレクションネクロマンサー様の探索を提案しようとしたが、リーフは提案を聞き終わる前に拒否するのであった。
急に熱が冷めたかのような無関心な態度、気にならないと言えば噓になるが、これ以上ここで足を止めて時間を食うのは愚策。
生きる為にも、とにかく食料を確保をすることを優先する。
リーフは自分で言った通りに、暗く長い通路を照らしながらみんなと一直線に食糧庫へと向かうが、
(……アフレクションネクロマンサー様)
ここにいたくない、食料の方が大事と言ったリーフであったが、本当の心の内は違った。
最初の予定通りに、アフレクションネクロマンサー様を探しに行きたいと心の底では願うが、
(出来たら、お会いしてみたかったです……)
心の底から会いたいと思いながらも、それを実行する訳にはいかない事情が出来てしまったのだ。




