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アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
旅立ち
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旅立ち59

部屋中に溢れる鉄騎兵。


一見しただけでは、獲物が来るのを今か今かと待ち構えて詰め寄っているように見えるが、よくよく見ると学生が朝礼で並び立つように規則正しく行儀良く、等間隔に整理整頓されて鉄騎兵が並び立っている。


「それによく見て。この鉄騎兵には何も入ってない」


リーフの言う通り、この部屋にいる鉄騎兵の体は赤くなく、透明な人型の膜が見える。


「……そうか、ここは」


ビレーは咆哮を上げようとりきんだ力を緩めると、目の前にある鉄騎兵に近付いて触り、


「鉄騎兵の置き場所にしているのか」


目の前にあるのが、人型の膜に鎧を着させただけの人形だということを確かめる。


周囲を見渡し、ここには動く鉄騎兵が、体の中に赤いモノを内包しているものが一体もいない事が分かると、


「随分と舐められたものだ……」


ビレーは抜け道に通じている部屋を、鉄騎兵の物置にされている事に憤慨する。


ここまでの抜け道に一体の鉄騎兵もおらず、一切の罠が無かったのは、我々など襲るるに足らずという事。


抜け穴に配置するのに十分な量があるのに、この部屋に鉄騎兵をわんさかと詰め込んでいるのも、侵入した相手を驚かすための悪趣味な考えから来ているのだろう。


自分達の方が窮地に追い詰められている弱い存在なのは間違い無いが、それでも侮辱的なこの態度、相手は我々を敵としてでなく、煩わしい小虫にしか思っていない。


どこまでも舐めた態度に、咆哮を上げて怒りをぶちまけたくなるが、


「……今の私達なら、相手に舐められている方が都合が良いし。目にものを見せるなら、この拠点を取り返しに来た時で良いじゃない」


「……そうだな。我々が取るに足らない敵というのなら、言葉に甘えてさっさと出て行ってしまおう」


怒りを覚えて震えるビレーのことを思いやるリーフの言葉が、行き場の無いビレーの怒りと屈辱感を癒す。

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