旅立ち57
ビレーがここまで来れたのは指揮官として、年長者としてみんなを故郷に帰らせるという使命感があったから。
しかし、それは裏を返せばビレーだって使命感が無ければ、怯えて震えたい。
心の底には、こんなのはただの悪あがきで、いっその事みんなで自害した方が楽になれるのではないのかと、思いが渦巻いている。
自分の中で無謀な事だと思っていることを、自分の判断で現実に実行しようとすることへの苦しみ……
リーフだって、そのことは十分に理解しているはずのなのに、
(アフレクションネクロマンサー様か……)
健やかに笑えるのは、アフレクションネクロマンサー様という存在のお陰なのか?
普段からアフレクションネクロマンサー様を狂信的なまでに崇拝している訳でも無く、物語の中の英雄くらいの憧れは持っていたであろう。
さすがに、今のリーフ程にアフレクションネクロマンサー様を信じる事など出来無いが、それでもリーフが前に進むというのなら進むしかない。
最後の口火を切る役目を担うはずだったビレーに変わり、リーフがみんなの前に出て。
目の前の剝き出しになっているレンガの中には、下の方に一か所だけへこんでいる部分があり、そこに指を掛けて、
「ここのレンガがつっかえ棒になってて、これを外すとこの壁をドアみたいに開閉する事が出来るの。この先は誰もいない前のままの武器庫かもしれないし、改築されて敵の駐在所になってるかも……」
この先に希望であるアフレクションネクロマンサー様がいるはずだが、それよりも現実的な敵がいる。
自分達が、希望を掴むためには現実と向き合わないといけない。
最後の確認。
みんなの顔を、目を見て、自分の選んだ道をみんなが信じてくれている。
「ありがとう」
まるで、最期の別れのような言葉で縁起が悪いようであったが、それでも、自分の事を信じて付いて来てくれたみんなに、お礼を言いたかったのだ。




