旅立ち51
ぼやけた光と、体が覚えている感覚を頼りに慎重に前へ進むが、所々で鉄騎兵が『ガシャ…ガシャ……』っと鎧が擦れる音を鳴らし『ガサガサ』っと木々を揺らしながらパトロールをしている音が、耳の側で小虫が羽音を立てているかのように聞こえる。
間違い無く、先程の猪突猛進な進行で敵に大体の居場所がバレて、鉄騎兵は重点的にこのエリアを探索しているのだろう。
すぐ側にいる鉄騎兵の気配、本当なら息を潜めながら震え、一分一秒でも早く立ち去ってくれるのを祈る所だろうが、
「大丈夫、私達にはアフレクションネクロマンサー様の御加護があるわ」
「はい……」
「みんな進むぞ…足を止めたら進めなくなる……!!」
リーフはアフレクションネクロマンサー様のことを無垢に信じているから恐れずに進めているが、他の者達はビレーを含め、聞こえてくる音に体が束縛されないように、小声でお互いに励まし合う。
すぐにでも、その場でうずくまって目を閉じ耳を塞ぎ、恐怖という現実を遮断してしまいたくなるが、リーフの希望を感じて恐れない態度が希望になる。
みんなが励まし合って進まないといけない状況下で、リーフだけは周りを恐れずに進む。
鉄騎兵は間違い無く自分達の側にいるが、こちらを見付けて近付いて来ている訳では無い。
手当たり次第に周囲を歩き回っているのか、鎧の擦れる音は近付いたかと思えば離れ、離れたと思えば近付いてくる。
あちらも暗闇という五里霧中の中を歩きながら、こちらを探している。
無我夢中で走った時は、姫に追い付く事だけを考えたから余計な事を考えないで済んだが、無我夢中の夢の中から気が覚めてしまえば、自分の置かれている状況を理解して不安になる。
それでも、懸命に抜け穴を目指して、慎重に進んで行くと、
「抜け穴だ」
見覚えのある地形に辿り着いたビレーは、全員の歩みを止まらせて周囲を見渡す。




