夢の中25
アニーが礼人に霊力を霧を伝授させようとしたのは何も上機嫌だっただけではない。
「アニー!!」
「使えるものは何でも使わないとですよ?」
アニーはアニーで第七感が空気を読んでいた……何かがこの近くにいると。
自分達を狙う存在は息を潜め、気配を殺し、自分達を襲う為に身を隠していることを。
その妖が自分の目の前に姿を現さないかとアニーは待っていたが、影の「か」の字も見せない。
それもそのはず、アニー達はしっかりと連携と陣を組んで隙が無く。
そんな状況では、相手も舌なめずりをするだけで、その舌が獲物を舐めることは出来ない。
その状況が続けば、妖は舌に甘美な味を求めて自分達から離れて他の獲物を探しに人のいる民家に降りてしまう。
二月とてそんなことは分かっていたがを、如何せん決定打が見えない。
手札が無い、それも切り札とかで無く、場を繋いでいく為の基本的な手札。
このままでは埒が明かず、その埒が明けた時には手遅れになってしまうかもしれない。
だから、アニーは一考した。
妖がどうしたら自分達に姿を見せるか?っと。
そして、その一考の中で単純な答えに辿り着く……それはこちらから触れれば良いのだと。
それは普通なら火中の栗を拾いに行く行為だが、アニーには魔力の霧を使うことが出来る。
絶対に安全とは言えないが、離れた所から触れられるというのは事を考えれば十分に可能であると……
しかし、その選択肢はアニーにとっては最低な部類であった。
魔力の霧で妖を呼び出しても、その後が続かない。
魔力の霧はあくまでも切り札で、最初から意表を突くというやり方もあるかもしれないが、妖を呼び出すという事だけに切り札を切りたいとは思わない。
だったらどうするか?誰かを犠牲にする?……それはさすがに周りから反感を買って出来ないだろう。
どうしたら良いものか?
そう悩んでいた矢先に今日の礼人の、霊力を使った投扇興を思い出した。
ここにいる者達に自分の切り札を教える気はさらさら無いし、そもそも出来もしないだろう。
だが、礼人は霊能者になるために日頃からの研鑽を怠らず、その中でも霊力を具現化させるのが特に上手かった。
その結果として霊能者の基礎はでき、霊力の具現化という面では他の霊能者より一歩前に出ていた。
それを考慮した時、少し早いかもしれないが礼人にここで自分の切り札の習得する機会を与え、同時に自分の代わりに妖を呼び込む役割を果たさせるのが一番の選択肢だと判断したのだ。




