旅立ち45
「私達が生きて帰る為とかじゃなくて、未来を切り開くためにアフレクションネクロマンサー様の力が必要だと思うの……それは、このまま滅んでしまう運命を変えるために……」
まるで風鈴が鳴り響くように、静かながらにしっかりと耳に残る声は、
「私達で迎えに行くのは、英雄にすがる弱い存在じゃなくて、英雄と共に運命に抗う者達として迎えに行きたい……そうしないと、アフレクションネクロマンサー様に出会えないまま……出会えないまま、私達はこの世界から消えてしまう気がするの……」
「…………」
「私の考えに同意出来ないなら、私を置いてどこかに隠れていて……私一人で敵の拠点に入り込んで、もしダメだったら私が囮になるから……その隙に食料を奪って逃げ出して」
少女とは思えない凛とした声は覚悟を決めているからだ。
リーフの覚悟は本物なのだ。
出来たらみんなにも一緒に来て貰って、アフレクションネクロマンサー様を探すのを助けて欲しいと思ったが、自分のわがままで無駄死にをするかもしれないことに、無理強いすることは出来ない。
「姫……せめて一度、時間を置いてから」
「ダメ、今じゃないとダメなの」
「…………」
自分のわがままにみんなを付き合わせる訳にはいかないが、諦めて闇夜に包まれた森の中に身を隠すつもりも無い。
選択肢は一つ、敵の拠点に乗り込む。
そこにみんなが来てくれるかどうかだけ。
みんなを見つめるリーフの目には威圧する物は一切無く、みんなの意思を聞きたくて、真正面からみんなの表情を見ると、その表情は困った顔をしていた。
リーフの言葉に従ってアフレクションネクロマンサー様を探す……英雄と呼ばれたアフレクションネクロマンサー様と出会えたなら確かにこの状況を何とかしてくれるかもしれない。
しかし、もしアフレクションネクロマンサー様に出会えたとしても、結局は助かる事無く死んでしまう可能性だってある。
アフレクションネクロマンサー様を英雄として呼び、心の拠り所としているのだが……
「……みんなは食料の確保を優先してくれ。私はリーフと一緒にアフレクションネクロマンサー様を見付けてくる」
「ビレー隊長……」
リーフの言葉に従うべきか、それとも諫めるべきなのかと判断をしかねて誰もが声を出すことが出来なかったが、この重たい空気の中で決意を決めたビレーが口を開いた。




