旅立ち38
夢の中でも、現実の世界と同じように鬱蒼とした森の中を、空を駆ける銀の光を見失わないように走る。
だが、ここは赤いモノが忍び込んでいる夢の世界、木々の間からリーフを狙うように赤いモノがモヤとなって視界を奪い、駆ける一歩を捉えようと赤いモノの水溜まりが足元に広がる。
夢の中とはいえ、赤いモノに取り込まれると精神を侵されて正体を無くし、そのまま目覚めることが無くなってしまう危険があるが、それでもなりふり構わずに走る。
懸命に走るれば走るほどに赤いモノのモヤが目を、顔を濡らし、懸命に走れば走る程に足は赤いモノで染まっていく。
自分というモノが赤い色に塗り潰されて、輪郭だけになってしまっていくのを感じて、これがいけない事だと分かっていても、
(おねがい……)
リーフは空を……穢されること無く赤い空を飛んでいく銀の光を求め、
(おねがい……)
体が赤いモノに侵食されて足がもつれ、そのまま姿勢を取り直すことが出来ずに、顔から赤いモノの水溜まりに倒れ込んでずぶ濡れになってしまい、今に自分が消えてしまうという、取り返しのつかない所まで来てしまうが、
「私と一緒に来て!!」
彼女は遠くに……遠くに行ってしまう銀の光を求めて大きな叫び声を上げた瞬間に意識が無くなった。
求めた銀の光は遠く、どこかへ向かって行く……力を振り絞って大きな声を上げたのを皮切りに、体は一気に赤いモノに侵食されて赤い人の形をした輪郭だけになって自我を失い……
(その子から離れろ!!)
「あっ……」
銀の光を叫んで呼んだ自分と同じように、銀の光から自分を叫ぶ声が響くと赤く染まった自分が色付いて還って来る。




