旅立ち33
年老いたオークは食料が入った、元は大きかったであろう、やせ細った袋を取り出し、中からドングリのような小さな丸薬とシワが入っていかにも新鮮ではありませんという果実を取り出し、それを一人一人に手渡していく。
そんな食べ物とは言えない物に、誰一人文句を言わず。
誰一人声を出す事無く黙って受け取り、無言のままで食べ始める。
食事というよりも、生き延びる為に食べているという表現が正しく、
「姫、食事をとりましょう」
「うん……」
生きる延びる為だけの食事。
ドングリのように小さいのに妙に重く、持っただけでスカスカと分かってしまう果実を手に取って口の中に入れると、
(不味い……)
これは緊急用の食べ物……美味しいか不味いかで言えば不味いのは当たり前で、故郷にいる時の食事とは違う物だと分かっているのに、
「うっ…ぐっ……ぐすっ……」
涙が溢れ出てしまう。
不味いとかひもじいとかじゃなくて、食べられるだけ感謝をしないといけないのだが……
「つらいよぉ……」
「「…………」」
リーフは我慢出来ずに本音をこぼしてしまう。
リーフは姫と呼ばれ、身丈は2mは超える立派な体格をしていたが、その正体は、
「フレンに……お父さんに会いたいかい?」
「…………」
軍隊長のフレンの娘……エルフの少女なのである。
リーフは父が軍隊長を務める為に、みんなから姫と呼ばれているが、本当は人質として、フレンが反逆をしないように戦場に連れ出されていた。




