旅立ち32
「……?」
「どうかなさいましたか姫?」
鬱蒼とした森の中、1人の女性が何かを感じてキョロキョロと辺りを見渡すと、周りの兵士であるオーク達も緊張した面持ちで周囲の警戒を始めるが、
「……みんなは何も感じ無かった?」
「いえ、我々は何も……」
「それなら、私の気が立っていたせいね……紛らわしいマネをしてごめんなさい」
「そんなことはございません」
ずっと……ずっと、隠密行動で敵陣にいたせいで気が休まることが無く、感覚が疲弊してしまっていたのだろう。
「ふぅ……」
疲弊してしまった感覚を癒すために、深い溜息を吐くと、
「……皆、ここで休息を取る……これが最後の休息になる。思う存分休め」
疲弊困憊になってしまっている姫の溜息を合図に、年老いたオークが休憩の号令を出すと、みんながその場にへたり込む。
「だったら、みんなはそのまま休んで、私が見張りを……」
「リーフ…休みなさい……みんな疲れ切っているのは分かっている……」
みんながへたり込んで座るのを見て、女性……リーフは気丈に振舞おうと見張りを買って出たが、それがみんなの士気を下げないようにする為に、空元気から来る物だというのはバレバレで、
「……はい、おじいさま」
リーフは虚勢を張っていることを指摘されると、その巨木のように大きい体を地に伏せるように、倒れるように素直に地面にへたり込んでしまう。
みんなが頭を項垂れ、息を切らして辛い表情を見せている。
誰一人として、辛さを億面に出さないように努力をする者はいない。
逆にみんなが辛いという感情を見せることで、ある種の協調と感情の共有が出来て落ち着く。
絶望の中とはいえ、休むことが出来るというのはありがたいし、
「これより、食事の配給をする」
そんなありがたい中での食事、これで心も体もより休ませることが出来る。




