夢の中23
「さぁ、いつも通りに」
アニーが礼人に霊力を込めるように促す。
「……分かりました」
礼人は目をつぶり、精神を集中させて自分の手の中に霊力の玉を作ると、
「良いですよ礼人、そのまま霊力を維持して」
礼人が作った霊力の玉にアニーが触れて、
「うん…よく頑張ってますね。練度の低い霊力だと豆腐みたいにグチュってなってしまうんですが、チーズのようにしっかりと形作られています」
しっかりと形作られている霊力の玉に満足気な表情を見せる。
「ではこの霊力を私が拡散させます。その時の感覚を忘れないで下さい」
礼人の霊力に人差し指をあてがい、
「いきますよ」
そう言った瞬間、礼人の霊力の玉が弾けて霧のように周囲に散っていく。
「あっ……」
それは何とも言えない不思議な感覚であった。
今は裂け目を塞いで時間が経ったお陰で周囲の穢れは収まっていて、そのお陰で周囲の状況が感じられる。
弾けた霊力の玉がまるで自分の皮膚のように感じられ、それが周りに漂っていく。
雪の冷たさ、木々のざらついた幹、人間の柔らかい肌。
それらの感触を知ろうとするかのように霊力が膜になって触れていく。
「礼人、あなたがこの霊力の霧から感触を掴めているというのは日頃の鍛錬を欠かさずやっている証拠……素晴らしいです。今回は私がきっかけを作りましたが、コツを掴めばすぐにでも出来るという事です」
「アニー……」
「どうしました?」
アニーが自分を褒めてくれる……それは凄く嬉しいことで、今までアニーに褒められたのは片手で事足りる程度。
大体はもっと頑張りましょうとか、こうした方が良いというアドバイスばかりで中々褒めて貰えない。
それ自体は礼人の成長を止めないようにという配慮なのだが、今日に限っては普段なら褒めて貰えないようなことで褒めて貰い、教えて貰えないようなことを教えて貰えている……
それがとても気掛かりで、何か遺言のようなものを感じ「何か気になることがあるんですか?」その一言が喉から出てしましそうになるのだが、
「今日は気分が良い……そういう事ですよ」
何を言わんとしているのか分かったのか、アニーは礼人の言葉が喉から出る前に塞いでしまう。




