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旅立ち25
リミィは慌てないでと言うが、自分が張っていた結界を、何の意に介する事無く飛び越えたかと思えば、一瞬で自分の力に合わせてマナを混ぜ込み、
(この人は化け物か……?)
大地に強い光の線が現れると赤い怨念を囲み、より強固な結界が張られる。
この一瞬で、流れるような風のように行われた動作に、この人が鋼鉄の巨人を作っていなくて、もしも、この人が生きていたのなら、自分はこの人に教示を受けたいと心の底から思った。
これから敵と相対するというのに、そこには一切の焦りの色は無く、午後の昼下がりのような健やかな時間が彼女の中に流れている。
自分が感じた格の差というのは力だけでは無く、人生の経験の差からも来ているのかもしれない。
礼人にとっての一大事が、彼女の中では朝食を取るような小事でしかなく……
(ほらっ、集中して。これから出てくるのがアナタと戦って欲しい存在なんだから)
リミィを惚けて見ていた礼人。
そんな彼の視線に気付いたリミィは目を合わせて、にこやかに微笑しながらたしなめると、礼人は恥ずかしそうに視線を外すのであった。




