旅立ち20
彼女が身動き一つ取らないのは、自分を慕ってくれた者が、その身を挺してくれると算段したからなのか。
どんな関係で、どんな理由があるのか分からないが、献身的に彼女を守ろうとする魂に、
「哀れな……」
素直な気持ちで哀れみの言葉を掛ける。
戦争に巻き込まれて亡くなった者の魂なのだろうが、彼女を庇うというのならこのまま……
(あまり…私の事を怒らせないで下さいね)
このまま彼女ごと、この世から消滅させよとしたが、彼女から感情のこもった……怒りが滲む声が身体の中に入り込んで、脳が直接、殴られたかのような衝撃が走ったかと思うと、彼女の周りが白く光る。
礼人が放った光以上の光で彼女の周りが輝く。
「くっ……」
礼人の力が押し返される。
手加減も手心も一切加えていない力が押し返される。
突如として放たれた力に礼人の体が瞬時に反応して、背中の羽が大きく羽ばたくと一気に後ろに下がっていた。
彼女の放った力は全てを焼き尽くす光、怒り狂った龍が天から轟音を鳴らして大地にある物を破壊尽くさんとする雷の光。
共に人智を越えた力と力での応酬であったが、
(素晴らしいです、この世界は……これだけのマナがあれば、私もアフレクションネクロマンサーに頼ったりしないで、自分の力で何とか出来たんですが)
リミィのマナを扱う力は並大抵では無かった。
マナだけの力にも関わらず、霊力とマナを融合させた力に匹敵する量のマナを、彼女は扱ってみせたのだ。
これがもし、生者の時であれば間違い無く礼人を凌駕していた。




