旅立ち19
礼人の怒りが言葉になり、怒りの言葉がリミィに叩き付けられる。
リミィは礼人の怒りの言葉に対して何かしらの言葉を返さないといけない。
言葉を選ばなければ、消されてしまうかもという状況になったのだが、
(アナタの言う鋼鉄の巨人は、私の作った鉄騎兵の事でしょうね)
何かしらの言葉を返さないといけないという状況ではあるが、なんら言葉にオブラートを包むことなく、あっけからんと鋼鉄の巨人を作ったのは自分だと打ち明ける。
もしかしたら、その言葉は礼人をからかうつもりで言ったのかもしれないし、嘘を付いて更なる怒りを買うよりマシかと思ったのかもしれないが、
「消え失せろ」
その言葉には一切の感情が無かった。
消えて当たり前の存在に同情は無い、存在価値すらない、この狂った魂をこの世から消すのは当たり前のこと。
礼人は右の手の平の中に、一瞬で目の前にいる魂を消し去るだけの力を込めて、躊躇無く解き放つ。
圧倒的な力。
まさに一吹きで村を炎で包むドラゴンの息吹そのもの、自分を焼き尽くそうと放たれた力にリミィは、
(…………)
悲鳴を上げて恐れることも無く、我が身を守ろうとすらしない。
それは圧倒的な力を目の前にしての諦めなのか?それとも、魂を使う悪魔の兵器を作り出した償いのつもりなのか?
一切の身動きを取らないリミィ、このまま彼女の魂は溶かされて消えていく運命に思えたが、
(セイ…ジョサマ……)
「なんだ?」
空で咲いていた赤いバラから花びらがこぼれて、彼女の元へと降りてくる。
「そういうことか……」
どうやら、舞い落ちてくる魂は彼女との関係があるらしく、自我も崩壊し掛けているにも関わらずに、彼女の事を身を挺して守ろうとする。
礼人にはリミィという人物がどんなの人なのか分からないが、鋼鉄の巨人という物を作って、戦争を仕掛けるなどまともな精神をしている訳が無い。




