旅立ち16
子供をあやすかのような彼女の態度、それと彼女はアフレクションネクロマンサー「様」ではなく、彼女達の世界で英雄と呼ばれたアフレクションネクロマンサーに、敬称を付ける事無く呼び捨てにする。
彼女にとってアフレクションネクロマンサーは敬うべき存在ではなく、ただ力を有する者程度にしか思っていないのだろう。
アフレクションネクロマンサーと名乗ることで、多少なりとも反応を見せると思った相手が一切の畏怖のこもっていない目で、羨望が一切無い目を向けて語り掛けてくる。
(どうしてもあなたの力が必要なのです……私達の世界では間もなくマナが枯渇して、全ての生命が死に至ります)
「…………」
(みんなで残り少ないマナを巡って争い……)
「一つ確認したい!!」
(……はい)
彼女が、大切であり重大な事を伝えようとしているのにも関わらず、礼人は彼女の言葉を遮るために、大きな怒気を含んだ声を荒げる。
目は鋭く、礼人の怒りに呼応して白い目から白い炎が上がってゆらゆらと揺れて、明らかな敵意がリミィを刺す。
(……)
今度は、礼人に怒り燃える姿に彼女が怯むことになった。
さっきまで目の前に見ていた少年は無理して大人ぶっていて、子供が背伸びをするような可愛らしいさというよりは、そうしなければならないという使命感から来る悲痛な物は感じていた。
確かに、最初にこの子を見た時にはアフレクションネクロマンサーを名乗るだけの力はあるのは分かったが、アニーさんが教えてくれた通りまだ子供で、威厳という物が無かった。
だからこそ、リミィは目の前の少年、礼人をあやすように導こうとしたのだが、
「鋼鉄の巨人を作ったのは誰だ!!」
礼人の溢れ出る怒りに威厳という物は無いが、
(なんて…恐ろしい子なの……)
思いのままに全てを焼き尽くすという言葉を文字通りに行える、ドラゴンのような重圧を感じた。




