旅立ち14
この調子で行けば、異世界から噴き出る赤い怨念は……
(お願いです……どうか、私達の世界に来てください)
「えっ……」
声が鮮明に響く。
耳では無く、自分の中に声が聞こえたという事は魂が自分に語り掛けて来たという事なのだろうが、あまりにしっかりとした声、意識を持った声に礼人は近くに誰かいるのではないのかと挙動不審にキョロキョロと周りを見渡してしまう。
普通の魂というのは肉体から離れた時点で、意識が不安定な存在になってしまう。
例外としては霊能者や霊力の強い土地等で、霊力を供給されて意識が元の状況に戻ることがあり、
「アナタは誰なんですか?」
(私は、一国を預かっていたエルフのリミィと申します)
霊能者や、マナを扱う事に長けていた者は亡くなった後も、生者のように意識を持って会話をすることが出来ることがある。
一国を預けられていたという事なら余程、教養があって能力があって有能か、無能でも血筋で国を貰えたかなのだろうが、
「私はこの世界の霊能……アフレクションネクロマンサーの二月 礼人と申します」
少なくとも、この怨霊溢れる場所で意識を保ちながら話せるとい事は、それ相応の立場とマナを扱う事には長けていた人物なのは間違い無いのなさそうであるが……それが、良い人なのか悪い人なのか別として。
出来うる限り冷静に……しかし、こちらもそれ相応の人物であるという事を示すためにアフレクションネクロマンサーの名前を出して、事に構えるが、
(あぁ……あなたが、アニーさんが言っていたアフレクションネクロマンサーなんですね)
「…………っ!!」
声が詰まった。
どんな話を、何を言われるかは分からなかったが、ここで向こうの世界のエルフからアニーさんの名前を聞かされたのもそうだが、礼人がアフレクションネクロマンサーという存在になったのは、あの雪山での事件の後の話。
今、話し掛けているエルフがその事を知るには、あの事件の後にアニーさんと接触したという事になる。




