旅立ち10
「これで良い…これで思い残す事は無い……」
礼人はやり残し事は無いと、着信で震えるプライベート用の携帯の電源を切り、窓際に立つと赤く噴出するモノを睨む。
あれは間違い無く、向こうからこっちの世界に流れ込んでいる魂。
「ふざけるなよ……」
あんなモノがこっちの世界に来て、こっちで好き勝手に欠片となって魂に付着されては、命の流れが狂ってしまう。
窓を開けてベランダの縁に立って、霊力とマナを結合させて銀色に輝く蝶の羽を作り出し、
「この世界は私が守り抜く!!」
自分のすべき事を口に出して、するべきことを認識し直すと、ベランダの縁を強く蹴って飛び立って行くのであった。
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赤く染まっていく夜空の中、銀の羽を持つ一匹の蝶が空を舞う。
赤く染まっていく空に誘われて銀の蝶が舞う。
闇夜を赤く染めるモノが次第にその形を変えて、一枚一枚花びらを広げると赤いバラを咲かせて、花びらを舞わせて銀の蝶を迎えにいく。
互いが互いに求めるように舞って、お互いに距離を縮めて、お互いに触れ合う所まで来ると、
「消え失せろ」
銀の蝶へと舞って来た赤いバラの花びらは、冷酷な一言と共に光った一閃で切り裂かれて黒い闇夜の中へと消えていく。
突然の裏切り行為、舞っていた赤い花びらは突風に吹かれたかのように散り散りに舞おうとするが、
「私は…この世界のアフレクションネクロマンサーだ!!」
散り散りに舞って逃げ出そうとした赤い花びらは、銀の羽に触れると、見る形も無く消滅する。




