旅立ち7
「……ふぅ」
自分の馬鹿さ加減に笑い飽き、目の前に見える濁った赤い入道雲を睨み付ける。
アニーさんの声が聞こえた理由は何らかの理由があるのは間違いない、出来ればアニーさんの事をイの一番に調べたいが、
「私は…霊能者だ!!」
じいちゃんとアニーさんに託されたこの力、自分の欲望だけに使う訳にはいかない。
黒電話の受話器を掴み、一つしかないダイヤルボタンを押して本部へとホットラインを繋げると、
「礼人か!?君も気付いたのか!!」
「えぇ、丁度目が覚めまして……マンションの中も怨霊に忍び込まれています」
「なんだと!?……とにかく、急いでそこから……」
「いえ、自分は直接現場に向かいます」
どうやら、この異常事態を気付いていたのか、本部でも蜂の巣を突っついたかのような大騒ぎになっていた。
多分だが、すぐに叩き起こされなかったのは、外の濁った赤い入道雲が今しがた発生してしまった為に、命令系統と対策の準備をしていたからなのだろう。
「……少し待ってくれ」
「待ってる時間で、事は進展すると思うので行きます」
「礼人!!」
「……ごめんなさい」
本当に緊急事態なのだ、本当に刻一刻で事態は悪化する……だから、向かわないといけないのだが、
「ごめんなさいか……」
黒電話の受話器を置いて一方的に電話切ると、仕事用に使っている携帯電話の電源も切って、クローゼットに向かうと霊戦服を取り出す。
それは普段の除霊の時とは違う、悪霊や妖怪と戦う時の戦闘服。
そこからさらに日本刀と弓矢を取り出して全てを自分の身にまとうと、あの冬の時の出で立ちと様変わりする。




