旅立ち5
「どうして……?」
あの冬の事件の後、じいちゃんとアニーさんの魂がこの世に残っていないか探し回った。
自分達が宴会で使った寺の中を探し、鋼鉄の巨人と死闘を繰り広げた森の中だって探した。
じいちゃんの家や自分がお世話になった霊山の麓の里にだって出向いた。
心当たりがある所は徹底的に探した……それが意味の無い行為だと薄々感じながらも……
じいちゃんもアニーさんも限界の限界、命を燃え上がらせて灰にして精魂を尽きさせたのだ。
考えたくはなかったが、あの時点でじいちゃんもアニーさんも消滅してしまったと考えるのが……
「アニーさん…アニーさんなんですか⁉」
考えるのが妥当なのだが、アニーさんの声が体の中に響くと、そんな事など頭の中で考える余裕は無かった。
外界と遮る為に掛けられているカーテン、その先にアニーさんの魂がある……なんら確信が無いのに憑りつかれたかのようにふらふらと足が動く。
ずっと…ずっと探していたアニーさんの魂……
「やっぱり…この世界で……彷徨っていたんですね…………」
じいちゃんもアニーさんも、自分の魂を消滅させるなんてありえない、
「僕の手で成仏させてあげます…そしたら、生まれ変わって……生まれ変わって…………」
人は時として前世の記憶を持って生まれ変わる事がある。
普通の、霊力を持ち合わせない一般人ですら前世の記憶を持って生まれ変わることがあるというのなら、霊能者やマナを扱えるエルフならその可能性は飛躍的に上がる。
アニーさんがこの世に生まれて戻ってくれる……常識では考えられない事だが、
「もう一度……やり直しましょう?」
礼人はカーテンを掴むと、アニーさんを迎えるために何の躊躇いも無くカーテンを開け放つ。




