旅立ち3
地上は大きな鯉に産み出された妖怪で溢れ返って一般人の生活圏に入り込み、メディアの発達も相まって妖怪という人間に危害を与える存在が認識されて、日本は一時的に妖怪の溢れるダークファンタジーな世界になりかけた。
しかし、その時代を駆け抜けた一人の霊能者と二月達が妖怪を始末し、国によって様々なメディアに統制が引かれて妖怪ブームという娯楽へと成り下がると、妖怪の始末も進んで姿も見られなくなって、妖怪ブームが去るのと同時に日本は落ち着きを取り戻した。
礼人はベッドから立ち上がると、頭の中に残る夢で見た世界の問題が気になりながらも、もう一度シャワーを浴びにいく。
(終戦後の話だからまだマシだったけど……これが戦争が続いて、その中で妖怪が溢れるようなことになれば…………)
そう、日本で起きた時のケースは終戦の後の話、もちろん時代は混迷を極めていたが、それでも戦争は……殺し合いは起きていなかった。
魂を浄化し、大きな鯉が産み出した妖怪を始末していけば、いつかは世界は正常に戻ったが、
(あのままじゃ……あの世界は終わってしまう……)
一つの世界が崩壊していくのを見て、いたたまれない気持ちになったが、自分ではどうしようも出来ない。
シャワー室に入って蛇口をひねり、今見たものを洗い流して忘れようとすると、
(((に…くい…ゆるさ……い……ころしてやる…………)))
「なっ!?」
シャワーから流れ出たのは赤い液体であった。




