旅立ち1
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礼人は夢で視る。
(……穢れてる)
炎が燃え上がるような美しい赤ではない、淀んだ汚らわしい赤、太陽の光を濁らせて地上は濁った赤い深海と化している。
(世界が清浄をする事が出来ないのか……)
肌に感じるモノで分かる、この穢れた赤いのは魂、成仏出来ずに現世に漂ってしまっている。
(なんでこんな事に……)
黒い海のようにどこか、成仏出来ない魂が辿り着くところが無いのだろうか?
(…いや、違う)
濁った赤い深海の底で泳ぐ者達を見て理解する。
(あまりにも量が多いんだ……)
命が消えていく、命が弾けて肉体を遺して魂が飛び出す。
魂が溢れ出る、鋼鉄の肉体が崩壊した中から、しまい込まれていた魂がこぼれ出る。
大地にこぼれた魂が空に浮かんでいく、魂が還る為に風船のようにゆらゆらと空に上がる。
命尽きた者の使命、欠片になって次の命の糧になる為に高く高く上がっていく。
(ダメだ……あれじゃ還れない……)
空に上がった魂の風船は、赤い空に辿り着くが還る事は出来ない。
入道雲のように分厚いモノは全て成仏出来ない魂達の集合体、還れない魂はそれでもいつかは還れると信じてその場に留まろうとするが、中には浮かび続ける事が出来なくなった魂が地上へと落ちていく。
ゆらゆらと昇った赤い風船が、地上へと失墜して落ちると潰れたトマトのように形を失う。
こちらの世界で還ることが出来なかった魂の行き先は、黒い海に落ちて、そこで長い時間を過ごすことになるのだが、
(なんでこんな事に……)
この世界では地に落ちた魂を飲み込む場所すら、魂が溢れかえって入ることが出来ていなかった。




