夢の中2
「気にするな、何度もやってれば霊力も落ちるさ」
「次は頑張ろうな!!」
四散した礼人の光の紙飛行機を見た周りの大人達は励ますが、
「……ふうっ」
自分の中で張り詰めていた力を息と一緒に吐き出し、軽く開いていた手を握ると自分の力不足を実感する。
だが、礼人は来年で高校一年生になる前の中学三年生、霊力も熟練度も大人と比べれば見劣りしてしまうのは当たり前、こればっかりは成長しなければどうにもならない問題。
時が解決してくれる問題ではあるが、本人にとってはどうしても成功させたい理由があったのだが、
「どれ、今度はワシの順番かのぉ」
「じいちゃん……」
今度は大人の中から一人の老人が前に出てくる。
「二月様……」
みんなの間を割って出た老人は礼人の側に座ると手を出し、
「礼人、焦ることは何もない。霊力というのは体力と一緒で、子供の時には成長して大人になって安定し、老いれば衰えるもの」
礼人に話しかけながら、無造作に出した手の中には一匹の白銀に光る蝶が止まっている。
「けれど、年を取ることは熟練していくこと。目を閉じて精神を統一して、霊力を球体に安定させてから折り紙にして形を折る……そんなことをしなくてもこんな風に出来るようになる」
白銀の蝶は二月の手の中からひらひらと飛び立つと、そのまま桐箱の上の的に辿り着き、白銀の蝶はまるで本物の蝶のように的の上で羽休みをしている。
「さすが二月様だ」
「お見事なお手前です」
その生きているかのような白銀の蝶を見た周りの者達は感嘆して二月を称えていたのだが、
「そうですよ礼人。今は霊力が育つ時期で霊力を磨く時……鍛錬を怠らなければアナタもおじいさんのように立派な霊能者になれますよ」
突然、小さな銀の矢が的を射抜いた。
「こらっ!!いきなりはダメだろう!!」
「よいよい」
突然飛び出した銀の矢に皆が驚くかと思ったが、驚くどころか誰がやったのかすぐに分かって一人の男に視線が集まる。
「ふふっ、すみません。あまりにも楽しそうだったのでついつい」
青い目とブラウンの髪を持つ男が悪びれること無く、二月のように礼人の側に座ると、
「アニーさん……」
礼人はその男のことをアニーと呼んだ。
青い目とブラウンの髪を持つ男……アニーは親指と人差し指、それに中指の三本を伸ばすと、
「ただし鍛錬を怠ったりすれば……」
親指と中指の間に銀の紐が伸び、そこから人差し指をたたむと、小さな弓矢みたいな形が出来上がり、
「一生雑用係で終わってしまいます」
たたんでいた人差し指を勢いよく、デコピンのように放つと先程飛んで来た矢のように的を再び撃つ。