異世界49
持ち上げられた鉄機兵はよく見なくとも、腕はひしゃげ、顔はへこんで身体のフレームは歪んでいる……こんな壊れた鉄機兵を見せた所で上の連中は納得するとは到底思えない。
どうせ言われるのは「それがどうした!?早く始末して来い!!」……こんな所が関の山であろう。
これが最初の時のように動いて暴れてくれたならば……
「あぁ、そのことだったら……丁度良いから話そうか」
フレンは会議室に向けていた歩みを止めて、オークが持つ鉄機兵に近付き、
「このまま見せても、皆様は納得して下さらないだろうから、納得頂けるように見て頂こうという話しさ」
「納得させる見せかた……ですか?」
オークは自分が持つ鉄機兵を見る。
「そうだ……少し派手になるが、私が会議室のドアごとサンダーボールで鉄機兵を吹き飛ばしてそのまま中に突入、そして間髪入れずに君達に攻撃を指示を出すから、そのまま部屋に突撃して鉄機兵を叩き潰して欲しい」
「しかしそれは……」
「大丈夫、叩き潰した後は君達には戦場に行くように指示を出す」
「ですから、それではフレン様が……」
フレンが魔法を炸裂させて視界を奪いながら、鉄機兵をドアごと吹き飛ばし、そこにオーク達の雄叫びのハンマーがセッションする。
突如として行われる戦闘に貴族の皆様は慌てふためき、鉄機兵が壊れていることに気が付くことなど出来ないだろう。
そして何より、自分達が安全だと思っていた場所が危機に晒されていると思えば、我が身可愛さに、この地を離れたいと思うのは必然。




