異世界45
嫌味に小言、精神的な苦しみをベルガが請け負ってくれるからこそ、フレンはこの瞬間も軍隊長として働くことが出来る。
さっきの果実酒を浴びたのも自分達の旗印であるフレンに、屈辱を味合わせないため、自分達の旗印の尊厳を守るため。
苦労を分かち合う者がいることを思えば、この程度のことでぐうの音を上げる訳にはいかない。
「それに、ただ頭を抑えていた訳ではないぞ……ベルガ、あの鉄機兵を会議室に持って行くぞ」
「あれをか?」
フレンが向ける視線にはベルガの手によってグチャグチャに折れ曲がって朽ちた鉄機兵がいる。
フレンの視線にベルガだけでなく、そこにいる全員が不思議そうな顔をしながらも鉄機兵を見る。
皆が鉄機兵を見る中、鉄機兵の方に近付き、
「判断の付かない奴なら、会議室にこんなのが乱入して来た時点でパニックになるだろうな」
廊下に伏せる鉄機兵の頭を触る。
何を言いたいかは分かった。
確かに、赤く染まってグチャグチャになっているとはいえ、鉄機兵が会議室に入ってくれば上のエルフは取り乱し、
「煽れば否応無しに撤退を考えるだろう」
これがフレンの本当の目的、前線では少ない物資と蓄積された疲労で苦しむ兵士達がいる。




