異世界36
懐柔されたフリをして復讐する機会を狙っていたが、
「許せ、我が同胞よ……」
次に我々に話し掛けて来たのは、同胞であるリザードマンであった。
そこでなぜ、世界がこのままでは持たないのか、冷戦という平和を壊してまでするべき事とは何だったのか、全てを教えられて渋々ではあったが、彼等に協力する事にした。
そして、協力の見返りとして貰えたのだが、
(この体があれば、世界を我々の手にするのも夢じゃない)
トカゲ型の鉄騎兵は地をシュルシュルと舐めるように滑り、オークが渾身の一撃を放とうとした瞬間、背中に霊力を込めて、犬が大地を蹴るように前に飛び出して、
『パシュン!!』
背中の鎧の間から霊力を放出して加速する。
ミサイルのような凄まじい加速力とは言わない、クラッカーを破裂させるような、ほんの一瞬の爆発的な加速。
短い距離の加速であったが、それは一瞬でオークの攻撃の範囲を越えて間合いに入り込み、勢いそのままに駆け抜けると薄羽が太腿を切り裂く。
薄羽がもっと高く、角度を付けることが出来たのなら、太腿の頸動脈を切り裂くことも出来たろう。
(この新しい鉄機兵の体……まだ改良の余地がある)
敵を討つのも任務だが、
「サンダーボール!!」
オークの股下をくぐった先で気を抜いていたオークとエルフの中から、こっちに目掛けて電気の塊が自分に突っ込んできた。
どうやら、全員が全員気を抜いていたのではなく、中にはこちらの警戒を解いていない者もいたらしい。
放たれた雷の塊は、鉄機兵の加速と相まって、光が煌めくかのように一瞬で鉄機兵にぶつかる。
いくら移動を主体にした形態と言えど、一瞬で迫る光の煌めきを避ける暇はなかった……暇はなかったが運が良かった。
こちらの急な加速に狙いを上手く付けられなかったのだろう。
広げていた薄羽一枚が壊されるだけで済んだ。




