異世界23
体が見えないロープで縛られたかのように、指先一本動かすだけでも億劫だったのだが、
『カシャ…カシャ……』
再び動き出した音に恐怖を感じると、先陣を務めるオーク達が無意識に足が一歩後ろに下がり、下がった前衛に習うように、後衛のエルフ達も下がった。
そこからさらに後ろに下がってしまうことはなかったが、後ろ向きなその姿勢に戦う意志は鳴りを潜めてしまい……
「ベルガしっかりしろ!!前に出るんだ!!」
鳴りを潜め…そのまま萎縮しそうになってしまった全員に檄を飛ばしたのはフレンであった。
「…っ!!すまんフレン……大丈夫だ!!」
後ろから飛ばされたフレンの叱咤に、ベルガは後ろに下げた足を前に出し直して、体を前に出す。
フレンの声はまさに起死回生。
後ろに下がって身を縮めていた全員が、フレンの声によって恐怖に囚われていた意識を取り戻し、ベルガが前に出たことによって士気が回復する。
さすがフレン、軍の指揮を執る人物、この程度では怯みもしない……といけば格好良かったのだが、本当の所を言ってしまえばフレンも恐怖を飲んでしまい、足が竦んでしまった。
だが、後ろから周りの者達が恐怖に溺れて沈んでいく様を見て、自分の中に入り込んだ恐怖を吐き出さなければ皆が危機に晒されると分かり、自分が溺れる前にベルガに檄を飛ばしたに過ぎない。




