168/1400
異世界19
鉄と鉄が擦れる音、敵がいると教える聞きたくない音。
その音が廊下の先から聞こえてくる。
『ガシャ……ガシャ…』
決して止むこと無く、ガシャガシャと鉄が擦れる音が鳴れば鳴るほど、鉄機兵が近付いて来ていることを伝えてくる。
廊下に響く音が容赦無くフレン達の耳に入ると、
「フレン、私達の後ろに……」
不穏を告げる音からフレンを守るようにベルガが前に出ると、他のオーク達にもエルフ達の前に出るように顎を一度突き出して命令を下す。
上下関係ではない。
接近戦を務めるのはオーク、体力があり皮膚の硬さもエルフ以上、これは一種の伝統とも言えるだろう。
ベルガの合図に、どのオークも文句を付けること無く前に出て、腰に備えている鉄で出来たハンマーを手に持って握り締めると、
「詠唱始め」
オークの後ろでフレンが率いるエルフ達が小声で詠唱を始めるが、それは何か決まったものを作ろうとしているのではない、それはあくまでもマナを魔法の動力源に変えているだけ。
そうすることによって、敵の動きに合わせて攻撃にも防御にも、オーク達の補助にも切り替えることが出来る。




