異世界12
「敵の奇襲です!!」
これでやることは決まった。
ここを落とされては皆が死ぬ、ここにいる者達だけでなく戦場に出ているみんなも。
「皆さんはここいにいて下さい、我々が出向きます……行こう」
上座に座る高貴なエルフ達を睨み付けるように目を向けて、有無を言わせない。
どれだけ高慢ちきで、戦場の状況把握が出来ない者だとしても、自分達が危機的状況に陥っているのは理解出来るらしく、睨み付けられた事に悪態を吐くことも無く。
下座に座っていたエルフとオーク達が兵士を連れて外に出ていくのを、憎たらしく見ながら見送るのであった。
部屋から出たエルフ達、先陣を切るのは矢面に立って高貴なエルフとやりあったエルフ、そしてその真横に立つのは一番最初に声を上げたオーク。
「奇襲か……どれ程の規模かは分かるか?」
オークは自分達に知らせを届けた兵士に聞けるだけの情報を求めると、
「規模は分かりません、新しい鉄機兵が攻めて来ているのです」
「新しい鉄機兵だと?」
そこで先陣を進んでいた二人のエルフとオークは目を合わせ、
「また厄介な物を……」
「こればかりは仕方無いですね……」
嫌なことを聞いたと、二人は鏡を見ているのではないのかと勘違いする程に、そっくりな渋い顔を見合う。
この戦争が始まって二年は経つ。
この世界では、リザードマンという爬虫類が強靭な肉体を手にした人種と、エルフという哺乳類から叡智重ねて知識を得た人種と二種類に分けられる。
そして、その他のオーク等の人種はというと……奴隷だ。
随分と大まかな説明に思うかもしれないが、これがこの世界の真実、人として扱われるにはリザードマンかエルフであることが絶対条件。
それ以外の生命体は、食物、奴隷、野生の生き物でしか無い。
そこに何があったのかと聞かれてしまうと、産まれた時からそうであったとしか言えない。
まぁ、爬虫類の方は種族の違いから来る争いと言えるかもしれないが、オーク、ドワーフ、サキュバス等の一族は気付いた時にはエルフの奴隷であった。
オークはエルフの為にリザードマン達と戦い、ドワーフは生活に必要な小物を作ったり城の材料を造り、サキュバスは子供を産む……そんな事がずっと昔から、続けられて来ていた。
「ベルガ……どう思う?」
「敵の進行は日が経つ毎に増して行き、こちらは疲弊して行きます……」
「自分達の国に帰って立て籠れば、もう数年は長らえるでしょう…っという事か」




