異世界10
「黙れ、そんな事は分かっている!!私が言っているのは、こんな状況にしておいて、お前達は何も感じないということだ!!」
物分かりが悪い。
何を分かっているというのだろうか?
現実に向き合って、現実問題を解決しないといけないのに、彼の提案は嫌味にしか聞こえず、油を注ぐ結果となって、的外れな叱責が続く形になってしまうだけであった。
結局は、話を切り出しても、素直に黙っていても何も変わらない。
のれんに腕押し、ぬかに釘……無駄な徒労と時間を費やす事になってしまう……そう思っていた時だった。
「大変です!!」
鎧を身に纏った一人のエルフ兵が、慌てて部屋に飛び込んでくる。
いきなり飛び込んで来た兵士、それに対して、
「分かっている!!その大変なことに付いて、追及しているんだ!!」
「どうした?何があった」
これだけで力量が分かるというか、器の差というのか……部屋に飛び込んで来た兵士は、どうしたら良いのか分からず、つい、上座に座るエルフではなく、下座に座るエルフの方に視線を向けてしまう。
兵士の行いは、無意識に頼れる方に目がいってしまった……その程度の事なのだが、それがどれだけ相手に喧嘩を売る行為なのか?
兵士は自分がしてしまった事に気付いて、ハッとして目線を落とす。
今更、高貴な身分様のエルフに目線を合わせても睨まれるだけ、それどころか顔を合わせて覚えられたらたまったものではない。
兵士は視線を下に降ろし、事無きを得ようとしたが、高貴なエルフ様は彼の態度にご立腹なのか、握り締めた手を震わせる。
このままでは、さっきまでのイライラを乗せて、この兵士に怒りをぶつけることになるのだろうが、それではこの兵士が可哀想なのと「大変です!!」っと言った内容を聞くのが先決。
「何が大変なんだ?敵襲か?」
下座のエルフは、高貴なエルフ様が声を荒げる前に、先に本題を話せるように話し掛ける。




