異世界6
もちろん、そんな事をしてしまえば殿を用意する以上に、死人が出るのは間違いない。
だが、そこには平等がある。
誰にでも、生きて故郷に帰るという希望が与えられる。
彼等に出来る選択肢は、多くの仲間を救うために誰かを犠牲にするか、誰にも生きるチャンスを与えるために多くの仲間を犠牲にするか……
どちらの選択をしても死人は出る。
前線の一部隊を取り扱うだけの者に、そんな判断をする権限はないのだが、
「危ない!!」
疲労のせいだろうか?
集中力を切らして、戦場で束の間の思案にふけたのがいけなかった。
仲間の声で意識が戻った次の瞬間には、防護膜を突き抜けた石が体に直撃していた。
その瞬間の事は何も覚えていない。
体に石がぶつかった瞬間に音が止まり、目の中の景色がグチャグチャにかき混ぜられると、景色が勝手に自分の中で暴れて意識が分からなくなる。
それは子供に投げ飛ばされた人形のように、法則も何もあったものじゃない。
何が起きているのかを理解出来ず、次に自分の意識を取り戻した時にはドス黒い赤い空が広がる。
(バカだな…私は……)
ドス黒い赤い空……それを見た時、エルフの心の中で砕けた。
(戦争をしている……)
体を蠢かせると右腕が動かない。
それは先程の石が鎖骨辺りに直撃して折れたからだろう。
「ふぅ……」
動かない利き腕に溜め息を吐き、左腕を空に掲げ、慣れない手の中で雷球とは違う、青い、目に映える原色の青い球を産む。




