黒い海66
この世界にいるエルフとオークと、もう一つの異世界の彼等と何の関係があるのかは分からないが、
(アニーさん……)
政府に、保護という名の管理をされていないアニーさんの家族の立場を所を考えると、魔女狩りの時期に何とか逃げ切って、人間社会に秘密裏に溶け込んだ一族なのだろう。
この後のことをどうするか考えていると、次第に頭が重くなって意識が遠退いて眠りそうになったが、
「礼人、着いたぞ」
「……あっ」
もう少しで眠りにつくという所で声を掛けられる。
ウトウトとしていた意識ではあるが、家に着いて声を掛けられては眠る事は出来ず、
「ありがとうございます」
「部屋まで送ろうか?」
「大丈夫です。廊下や階段で寝たりしないですよ」
眠い目を一度こすって、頭を振って眠気を取り除いてから車から降りると、そのままマンションの中へと入って行くのであった。
「おっ?お帰り礼人、今日のお仕事は終わりか?」
「いえ、潜霊服を着ないで黒い海に潜ったんで、これ以上のお仕事はちょっと、という事で上げて貰いました」
「ははっ、相変わらず無理するねぇ」
「無理が出来ますから」
マンションの中はオートロック式のドアに、来客対応をするための管理室があるのだが、その管理室の中から管理人に声を掛けられる。
「まぁ、あんまり無理するなよ?礼人の変わりはいないんだからな」
「肝に銘じておきます」
他愛の無い話をしながらオートロックのドアに鍵を刺し込むと、そのままエントランスを後にして部屋へと向かう。
少し長い廊下を歩いて先にあるエレベーターに乗り込み、何も考えずに自分の部屋のある階のボタンを押して、自分の階に辿り着くとそのまま自分の部屋へと戻っていく。




