プロローグ21
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「…………」
「雫さん、どうかしたんですか?」
「うぅん…誰かいるのかなって思ったんだけど、気のせいだったみたい……」
ドアの外から声を掛けられたと思って慌てて飛び出したのだが、そこには誰もいない。
「いきなりだったから、ジンが帰って来たのかと思っちゃいました」
「あはは、ごめんね……僕も帰って来たと思って慌てちゃった」
雫は狭い台所に戻ると、少し早い時間に食べた食器を片付けを続ける。
桶に溜めた水に浸した食器を、スポンジで洗ってから桶に戻し、桶の底にある洗っていない食器を取り出しては洗い、出来るだけ水を節水する為に、桶の水を最大限に使う。
「今日は、どこまで行くんですか?」
「今日?今日は一番果ての民間ブロックに行こうかなって思ってるよ」
カチャカチャと食器を手際よく洗い終えると、蛇口から水を出して、食器の水をかけて汚れ落としをしていく。
「そこを調べ終わったら……」
「そうだね。工業施設に産業施設とか軍の施設の方に行ってみて…それでも見付けられなったら、下の機械エリアに行ってみないとね」
「雫さん……雫さんなら大丈夫ですよね?」
「大丈夫、心配しないで。なんせ僕は今回の軍学校に入学試験で、体力部門で二位だったんだから」
洗い終えた食器を次々と水切りかごに並べ終えると、二の上での筋肉をアピールするように上で曲げると、
「そうですよね、雫さんの二位はただの二位じゃなくて、歴代二位ですもんね」
「凄いでしょ?足を使う事は歴代二位の僕に任せて……歴代一位がいなければ、僕がナンバー1だったんだから」
「あはは、私の中じゃ、雫さんがナンバー1です」
それは決して強がりでは無い、本院が言うう取り雫の身体能力は、歴代一位の子がいなければ、年度が違いさえすればナンバー1になれていた。
全ての身体検査でトップアスリート並みの成績を残し、誰からも羨望の眼差しで見られるはずであったのだが、
「あの子は特別な人間だよ……僕が、本気を出していたのに、向こうまるで準備運動をしているかのような……こっちが追い縋ろうとすると、簡単に引き離すんだ」
羨望の眼差しは、その子にすべて取られてしまった。




