プロローグ20
「お前は面白い奴だよ……アニメが好きで、その主人公の言葉がずっと好きで……パワードスーツの着用者になりたいなんて……」
そのアニメの主人公もパワードスーツを着用して、宇宙からの侵略者と戦うという概要のはずで……
「確か「ピープルは俺が守る」だっけか……?お前なら出来るさ……」
地上では、人がまだ暮らしている。
全員が全員、鳥かごという安全な場所に移住しているのではない、RLが悠々自適に蔓延る地上で、生きないといけない人達がいる。
そんな彼等を助けてあげたいと雫は、常に日頃から目を輝かせていて……
「雫……」
本当だったら、ここには立ち寄らずに自分の部屋まで行こうとしていた……けれど、無意識に足はここに来ていた。
(最後に話をしたい…俺は実はRLHという特別な人間で……お前と一緒に俺は……俺は戦え……)
インターホンに指が伸びる…ここを押せば雫が出て来る。
俺のボロボロな姿を見たら、赤ちゃんを包むように毛布でくるんでくれて、温かい飲み物を飲ませてくれる。
このドアの向こうには幸せが……
「雫さん、午後も探索に行かれるんですよね?」
「うん、見付けるまでずっと探すよ」
部屋の中から聞こえた、雫達の声で指が止まった。
「私も出来るだけの事はしているんですが……」
「うん、いつもありがとう。ネットって言うのかな?そういうのはからきしだから……助かってる」
「……そっか……探してくれているのか……そうだよな……探してくれるよな……」
インターホンを押そうとしていた指が開いて、ドアに手が触れる。
自分の手の甲に、頭を抑え付けて、
「…………」
ドア越しにいる雫に、聞こえない言葉を送ると、
「悪いな…凛の面倒を見て貰って……雫……また会おう」
さよならを言葉を投げ掛けると、そのまま雫の部屋の前を後にするのであった。




