プロローグ18
王との謁見。
下々のウサギの巣を上を闊歩する百獣の王。
戯れに手を振られれば、それだけ肉片になってしまうウサギ達は、目を付けられまいと巣の中で震える。
ここはもう彼のテリトリー、彼を襲うとする愚か者はここにはいない。
「それじゃあ……」
「……早く戻れよ。ここには長居出来ないんだからな」
「あぁ…分かってる……」
自分の王室へと向かう彼。
それに対して、リディが出来る精一杯は、お早い帰りを待つだけ。
付いて行って彼の護衛をしても良いのだが、付いて行ったらわざと自分の部屋に行かないであろう。
「格が違うな……」
車の中に戻り、運転席に座るとハンドルに腕を乗せて前屈みになる。
自分でも知らぬうちに緊張していたのか、彼が車から離れた途端に体から力が抜けたのを感じて、今更ながら、RLHの生命力というのか、存在感に驚かされてしまう。
「RLH…もう一人のRLHも同じような奴なのか……」
先にも言ったが、なにも彼が初めてのRLHなのではない、この鳥かごの中には、極秘で軍部が押さえているRLHがいる。
実際にはあった事は無いが、軍部が押さえているRLHは身体能力が異常に高く、その身体能力は猿のように身軽で、ゴリラのように強靭……
「あっ……!!聞き忘れちまった……」
あの時、自分が考えた答えが正しいのか彼に聞こうとしたのに、電話が来てしまったせいで、聞くのを忘れてしまっていた。
軍部が押さえているRLHは、ずば抜けた身体能力を持っているらしいが、彼はそんな事は無い。
身体能力的に言えば、そこら辺の一般人と何も変わらないし、知能テストもいたって普通……普通だかたこそ、彼の血の遺伝子の違いが際立つ。
人間と一切変わらない見た目をしながら、遺伝子に違いがある……それは人間とRLの違いを解明する……
「今は、そんな事を考えなくても良いか……」
慌てる事は無い……自分が考えている答えが正しいかどうかは、彼が戻って来てから聞けば良いし、人間とRLの違いを解明するのも地上に降りてからの話で……
「……必ず、この世界を取り戻す」
はやる気持ちを抑えて、彼が戻って来るのを待つのであった。




