139/1400
黒い海56
眼前一杯に広がる黒い海を裂いて疾走する。
地上に帰るまでは時間は掛からないだろう。
流れ星が夜空を切るように、地上に向かって昇っていく一筋の光。
一瞬、強く光り輝く閃光のように闇夜を照らして突き進み、
「見えた!!」
どの程度、黒い海を飛翔したかは分からないが、視界の先にガラスレンズを被さられたように、一か所だけクッキリと明るい光が見えた。
________
「隊長、黒い海に入ったチームから、礼人が先に戻って来るという連絡がありました」
「そうか、医療班は礼人が上がり次第健康チェックをしながら家に送り届けてやってくれ」
「はい」
陽のあたる世界、そこでは白いバンに、不発弾処理と書かれた横断幕を付けた車両と迷彩服を着た自衛隊が道を封鎖し、潜霊服を吊るすための小型クレーンが三台設置されている。
「それで、礼人はどの位で帰って来るって?」
「そんなに掛からないと言っていますが……」
報告を上げた者は小型クレーンの巻かれている残りのワイヤー具合を見て、
「30分は掛かりますかね?」
「そんなもんだな」
帰って来るまでの時間を算出する。




