プロローグ14
不思議な事に長い間、RLのような革新は人類には起きなかった。
どれだけ動物達が凶暴化し、どれだけ人類の住処を奪われても、人類には革新は起きない。
それは人類が完成された生命体であり、武器があるからこそ、これ以上の進化が必要無いから、人類には革新は起きないという結論に至った……が、
(我々の希望……なのか?)
自分の側にいる、RLHに疑問が湧く。
今の今まで存在しなったRLH、それがここ最近で複数人、確認されている。
特殊な力を持った、特別な人間。
RLに対抗できる人間が生まれた事は、喜ばしい事のように思えるかもしれないが、彼は人間なのだろうか?
それはパニック映画のように皮膚を骨が突き破り、筋肉が膨張して化物へと姿形が変わっていくというような話をしているのではない。
彼の…姿形は間違い無く人間だが、明確に遺伝子に差異がある。
今、私の背中にいる彼は、人間と動物とどっちに近い生命体のだろうか?
いや、今の彼は、人間と動物というカテゴリーから離れた第三の生命体なのではないのだろうか?
人間が猿から進化した生物というが、猿は猿、人は人、違う生物。
だとしたら、第三の生命体として成長し始めている彼が、完全な「何か」になった時、私達をどのように扱おうとするのだろうか?
「…………」
仲間として受けいれられるか?敵として滅ぼされてしまうのか?
彼という生物を……
「それ、本気?」
「えっ?」
彼に声を掛けられた途端、リディはハッとしてミラー越しに見える彼と視線が合い、
「その物騒な物から、手を離して欲しいんだけど?」
彼の視線が自分の脇の方に動いたのを見て、それに合わせるように自分の視線を動かすと、
「あっ……」
無意識のうちに、拳銃を握り締めていた。




