プロローグ9
「ミィオか」
「そう、ミィオっス」
美優の隣に立つもう一人の少女……ミィオは、美優の側にある車を見て、
「もしかしてスか?」
ミィオもナンバープレートを知っているのだろう、車の方を小さく指差す。
美優が、車の中の人と話をしているのを見ていて、自分も挨拶の一つでもしようと近付いたのかもしれない。
「あぁ…そうなんだけどなぁ……」
美優は、気まずそうに車の中にいるリディに視線を寄越すと、リディは顔を合わせないと、首を横に振ったので、
「また今度……」
リディのお願い通りに、車からミィオを遠ざけようとしたが、
「分かってるっス。でも、今度から軍の学校に行くんスから、挨拶したいじゃないスか」
覗き込む程ではないが、ミィオは美優を躱してヒョコっと顔を出してしまう。
「あっ!お前!?」
もちろん、美優も黙っていたのではなく、ミィオが自分の側に寄った瞬間に嫌な感じがしたので捕まえようとしたのだが、蛇のようにスルっと自分に絡みついて、脇から顔を出されてしまう。
慌ててミィオを引き離そうと頭を鷲掴みにした所で、
「リディさん!?お久しぶりっス!!」、
「……久しぶりだな」
ワンテンポ遅かったようで、ミィオは車の中に乗っていたリディと顔を合わせると嬉しそうに挨拶をして、挨拶された方のリディも、それに対して微笑んで挨拶を返すものの、その微笑みはどことなくぎこちなく、気まずそうな感じがする。
「どうしてここにいるんスか!?地上勤務の任は解かれたんスか!?」
「いやっ…そのな……」
気まずそうな雰囲気を出して、話を区切ろうとしているリディなのだが、ミィオはそんなのお構い無しに捲し立てて会話をして来て、
「そうっス、これから三人でどこか出掛けようっス!!」
「いやっ、待ってくれ!!」
「ミィオ!!!!」
会話の勢いそのままに、助手席のロックを外して乗り込もうとしたのを、リディと美優が慌てて止めよとしたのと同時に、
「申し訳ないけど、今は貸切なんだ」
車の中の彼がみかねて、慌ただしくしている彼女らを戒めるかのように声を出して乗車拒否をする。




