プロローグ7
車を停めたのは仕方無かった……電話口の相手と話をする為に、多少はヒートアップする……もとい、ヒートアップする演技をしながら、運転するのは単純に危なかった。
ちょっとした事で、ハンドル操作が誤るというのはよくある事で……
『トントンッ……』
「……そんな事考えている場合じゃなかったな」
運転の教習をしているのではない。
今はピンチなのだ。
自分の車をノックしている人間が軍の関係者なのか、それとも軍の車相手でも平然と、車両が止まっているだけでクレームを入れるアホなのかは分からないが、
(発進させるか?)
軍の人間ならマズイ。
いくら同じ軍の人間といえど、外から見たら誰が乗っているか分からない軍用車をノックしたりはしない。
十中八九、ナンバープレートの番号から私が乗っていると知った上でノックをしているのだろう。
あの電話口の相手は、お仕置きを恐れて上層部にはまだ連絡をしてないはず……それでも、追手が来たというのなら、軍独自でこちらを監視していて、この周囲を包囲している可能性が高く、そんな状況であったら、拳銃一つで突破出来る訳が無い。
『トントンッ……』
「…………」
何度もされるノック。
暗く曇っている窓ガラスの向こう側に、間違い無く誰かいる。
この車にノックする誰かを確認する為に、視線だけを動かしてみると、
「んっ?」
黒く曇っている窓ガラスといえど、内側からは外側の人物の容姿は見ることは出来る。
彼女は窓の向こうにいる人物を視認した途端に鋭くしていた瞳を緩め、この状況を打開しようとしていたのに、何の躊躇いもなく窓を開いてしまうと、
「お久しぶりです。リディさん」
青い学生服を着て、髪を後ろに纏めた少女に挨拶をされるのであった。




