黒い海55
「れ…礼人!?」
「なんだそれは……」
信じられない速度、信じられないほどの力……その信じられない光を従えている礼人。
二月とアニーから貰った霊力とマナだけでも人智を越えた存在に思えていたが、目の前にいる礼人はさらに遥か先にいる……一瞬で感じ取ってしまった力の差に、どう対応したら良いのかとまどってしまう。
「…………」
礼人は、今の自分を驚愕して見る仲間の目に、恐れおののく畏怖を感じ取ってしまう。
「この力に付いては後日説明します……子供の魂は救ったので帰りましょう」
いくら仲間同士と言えど、触れられたら精神をおかしくするだけの圧倒的な力を持った者と対峙しては、委縮してしまうのは当たり前の話だなと思うと、礼人は努めて朗らかな笑顔を向けて話を逸らして地上に帰るように促す。
礼人が敵対したり、攻撃してくる意思が無いのは分かっているが、圧倒的な力を持つ者に微笑まられると、何か自分の命を掴まれているようで、
「そ…そうだな……」
逆らう気なんて毛頭も無いが、それでも間違っても反論するような言葉を言わないようにとして、言葉が詰まってしまう。
「……そしたら、僕は先に戻ってますね」
「あぁ…俺達は……後から戻るよ」
腰が引けているみんなを見て、助けに来てくれてたのに先に帰るのは悪いと思いながらも、一緒に行くより一人で行った方がみんなも気が楽だろうと考えて、
「みんな、少し離れて」
みんなが後ずさるように自分から距離を取ったのを確認してから、再び羽の力を放出するとそのまま地上を目指して飛翔する。




