プロローグ4
「…………」
『プルルルルル』
普段だったら、こんな電話なんか無視して、彼を問い詰めるかのように質問をするのだろうが、今回はそうもいかない。
「分かっているとは思うけど」
「……少し寝てるさ」
彼は、電話の音を気に介さずに目をつぶると、そのまま静かになろうとするのだが、
「……生きてるよな?」
「もちろん、心配しないで話をして下さい」
やせ細ってしまった体で静かに眠られてしまうと、ただ彼が眠りに付いたのか、それとも今、力尽きて永遠の眠りに付いてしまったのか判断が付かなくて困る。
このまま目を離せば、最初からそこに居なかったかのように、静かに透けて消失してしまいそうなほど不安定な存在。
こんな取らなくても内容が分かる電話等を無視して、彼が消えないように見張っていたいが、この電話を無視すれば、彼が自分と接触している可能性を強く疑われる。
今現在でも、彼と接触しているかもと思われているのに違いないのに、強く疑われて、自分まで捕える対象にされては、彼を連れて地上に逃げ出すなど出来なくなってしまう。
どんなに無視を決め込みたい電話でも、今だけは無視することは出来ずに、車載電話をスピーカーに繋げる。
「はぁ……今日は、直帰するって言っただろ。電話切るからな」
「待つんだ!!」
「アタシの研究はアタシの物だ。それを盗もうとするのは構わないが、研究を催促されるつもりはない。また、明日な」
「そうじゃないから話を聞け!!」
疑われないように、いつものように溜め息混じりに電話を取り、いつものように話を一方的に叩っきり、普段ならこれで話が終わって、後は無視を決め込んでやれば良いのだが、
「……ほう、アタシ相手に怒鳴り散らすなんて、よっぽどの話なんだろうなぁ?車止めるから待ってろ」
今日の電話の主は、それでは引かない。
まぁ、事情は分かっているのだから、こちらも声をヒクつかせて話に乗っかる。




