プロローグ3
笑う彼の口元に、彼女はムスッとして頬を膨らませて、
「今までの動物実験を罪悪感に、頭を丸坊主にして尼になる気も、十字架握って神に懺悔する程、人間出来ていないけど……少なくともアンタが、そうやってボロボロになったのは、アタシのせいだと思う位の人間味は残っているんだよ」
「ふふっ…そうですね……そうじゃなきゃ、今頃ホルマリン漬けにされて標本にされてる」
自分が随分と滑稽な事を言ったと思い、照れ隠しなのか、少年に自分にだって人間味がある事をブスッとしながら言うと、彼は息を漏らすように笑う。
「はっ、意外と元気があるじゃないか?ここからは一人で歩いて行くか?」
「もう少し休んだら、それも良いな……」
彼の息を漏らす笑い方に、一人でこの鳥かごから出て行くほどの体力何て残っていないのは分かっているが、会話のキャッチボールのつもりで、おちょくる言葉を言ってみせたのだが、彼は言葉を間に受けたのか、片方の足の膝を曲げてストレッチを始める。
枯れた樹木のようにボロボロの体。
いくら精神は若い魂であっても、長い年月を重ねて辿り着く老人のような弱々しい体になっては、気が滅入るという話だろうが、それでも精神を保っていられるのは、彼の魂が強靭だからなのだろうか?
「なぁ、さっきのは……」
「センチな考えをしなければ良いんだよ」
「センチって……お前、まさか?」
研究所に収容されて、生き地獄を味わされたのだから、恨み節の一つや二つ出るのは当たり前の話なのだが、さっきの夢の話は恨み節ではないと言う。
そして、彼がセンチに……感傷的に考えなければ良いという言葉。
気が引けている状態では、フラットな気持ちで話を聞く事は出来無かったが、彼から言われて初めて、頭の中から感情を取り除いた時、ある仮説が頭の中に出来上がる。
「他の生物とリン……」
『プルルルルル』
自分の頭の中に浮かんだ仮説、それが正しいのどうかを彼に聞こうとした瞬間、魔の悪い車載電話が音を鳴らして、自分の事を呼ぶ。




